《MUMEI》
いつもの事(柊視点)
「会長、お疲れさまでした」

「あぁ。皆もお疲れ。じゃあ」


(早く希に会いに行かなきゃ!)


走り出したい気持ちを必死に堪えて俺は校門に向かって歩き出した。


生徒会長になるのも、入学式を任されるのも、俺にとってはいつもの事だった。


(また、『会長』って呼ばれる一年が始まるな)


それは、小中で経験済みだった。


それまで『高山君』『高山様』『キング』と俺を呼んでいた人間が、この一年は皆『会長』と呼ぶようになるのだ。


だから、尚更


「柊!」


名前で呼んでくれる、愛しい恋人の存在が嬉しかった。


まだ春休みの希は、先日ばあちゃんからもらった新車の軽自動車で、校門に来ていた。


ちなみにその車内には、俺が買った大量のお守りがあったりする。


「今行く!」


俺は結局最終的にダッシュで希の元に行き、助手席に乗り込んだ。


(来年は、逆になってるといいな)


意外と運転がうまい希を見ながら思った。


それから、密かに、俺を名前で呼んでくれる唯一の友人


祐也は今日は何をしてるか、気になった。

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