《MUMEI》
ママとお喋り(志貴視点)
入学式は私には関係無いから、その日もいつも通りパパのお店でバイトしていた。


「ちょっと意外だったわ」


春物のワンピースをショーウィンドウに飾りながら、ママが話しかけてきた。


「何が?」

「田中君が学校行くなら志貴も行くと思った」

「だって私、必要無いし」


絢香の好みは卒業した大蔵先輩みたいな可愛い系だから、色目を使われる心配も無かった。


「志貴は、もう田中君好きじゃないの?」

「友達として好き。彼氏としては… 綺麗過ぎる」


同じ身長なのに、私より手足細いし。


…何だか前より綺麗になった気がする。


「確かに」


ママは深く頷いて納得した。


「じゃあ、イエスタクマは?」


…ママも『イエスタクマ』が気に入っていた。


密かに高山家の中で、『イエスタクマ』は浸透しているようだ。


それは、あの日祐也の誕生日パーティーに出席した同級生達も同じだったりする。


「彼氏としては今はありえない」

「いじりがいのあるキャラって感じ?」

「…あえて言うならそんな感じ」


拓磨をからかうのは、確かに、かなり楽しいから。

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