《MUMEI》

ベランダに出て行った彼を見守っていると、ガーデニングをしていたのでしばらく様子を見ていた。

なかなか帰ってこないので、ベランダに出て行って話をしていたら突然あんな質問をされてしまった。

そうだよな…。

そういえば、彼は”男性”だ。

でも、そんな事も気にならないくらい彼は魅力的だった。

「なにもかもが美しくて…それに、キミを見た瞬間…素直に綺麗だと思ったんだ…」
「克哉さん…」

彼の魅力的で素晴らしい所を他にも思いつく限り色々と彼に語っていると、夜空を見上げていた彼が、ふと悲しそうな表情を見せた。

「……僕は」

そう言いかけて彼は私の側から離れると、今まで見せた事もないぐらい悲しい表情を私に向けてきた。

「僕は貴方が思ってるほど、綺麗な人間じゃないです…」




彼が逃げ込んで行ったバスルームには鍵が掛かっていて、その中では彼の啜り泣く声が聞こえていた。

「アキラ…何があったのか…聞かせてくれないか……」

そう言ってもそこからアキラはただ泣くだけで、俺の声には答えてくれなかった。

「どんな事があっても、私はキミを受け入れるつもりだ…だから出てきてほしい…」

聞いてくれたかどうかは分からない、だがさっきより泣き声は次第に収まってはいて、その静けさが逆に恐いくらいだった。

「アキラ…」

もし彼が思い詰めて…もしもの事があったらと思うと…。

俺は心が押し潰されて息もできないくらい、もう俺は彼にどっぷりとのめり込んでしまっていた。

「こんなに共にありたいと思ったのはキミだけで、何者にも代え難い存在なんだ……だからアキラ…お願いだ…」

最後は少し俺らしくもなく涙の混じった声だったかもしれない…。

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