《MUMEI》 Sein Geheimnis.彼の秘密。鍵の開かない扉に寄りかかって彼の気が済むまでずっと待っているつもりだった。 しばらく待って時計の長い針が反対側に動いたほどだっただろうか、扉の向こうから鍵がカチャリと開く音がした。 「…アキラ」 「……聞いてくれますか…僕の事」 やっと彼の姿が見れた事で安心してアキラを抱きしめようとしたら、俺の腕をすり抜けて彼はバスルームの端っこで小さくなって座る。 彼を見守るように俺も入り口の方で座ると、アキラも端で座ったままポツリポツリと話し始めてくれた。 「…僕…男性に……レイプ…された事があるんです…」 一瞬、自分の耳に何の言葉が聞こえたのか分からなかった。 男が、男に蹂躙された…という事だよな。 確かに、アキラは細身で見た目も綺麗だ。 そしてどことなく優しい姿は、手を伸ばして触りたくなるような雰囲気だった。 手を伸ばして、触れて、自分のモノにしたい…。 自分のモノにして、めちゃくちゃにしたい…。 という気にもさせるような…彼にはそんな雰囲気があった。 「僕…男なのに…って……でも、その後に受け入れた僕もバカだったんです」 彼は学生の頃、家での息苦しい生活に嫌気がさして家出をしようと決意した時期があったそうだ。 その時ちょうど声を掛けてきたのがお兄さんの友人で普段からも仲の良い人だったそうだ。 その彼の部屋に転がり込むと同時に身体を奪われ、それから半ば監禁状態のままその生活に甘んじていた…。 と、苦しそうに泣きながら俺に打ち明けてくれた。 「これも…」 そう言ってアキラがいつもピアスをしている所とは別の、少し隠していた耳の上の辺りにあった痛々しいピアスの痕を見せてくれた。 「…傷…直りが悪くって…未だにこんなんです」 「そう…だったのか…」 アキラの過去に受けてきた仕打ちを聞けば聞くほど、アキラを心の底から守ってやりたくなる反面…。 ……身体が反応してきてしまう。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |