《MUMEI》 「須泱が‥?」 「はい──今朝方参られて──『丑三つ時には絶対に帳の内には出られぬように』‥と言伝を」 丑三つ時、と聞いて‥桜はぴんときた。 (あれか──) 「紫苑様?」 「‥!!」 すぐ傍らに、女房の姿。 「今夜の事でしたらご心配なく──須泱さんが」 「ぁぁ‥」 桜は、今夜が不安な訳ではない。 むしろ、好都合だと思っていた。 狐叉にとっても。 「さく‥‥‥紫苑、えっと‥ちょっといい?」 「何だ‥?」 前へ |次へ |
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