《MUMEI》
なんでこの姿?
目が覚めた時、僕は目を疑った。
人間の様だけど、耳と尻尾の生えた変な奴等がいるんだ。
僕はいきなり首を掴まれ上に引き上げられる。


「そちらは雄ですが?」

「これは子猫の様だが、この髪色や尻尾の色は亡くなった子猫と同じだろ。」

「……何故それを。」

「一応開発者だからな。何年も掛けて考えた、そして現実になった商品だからな。」


僕らが、商品?
確かに猫や犬など動物を売ってると聞くけど、人間みたいなのまで売ってるの?
僕は考えていると息苦しいのに気付いた。


「ヴー!グウー!」

「苦しかったみたいだな。」


唸り声を聞いて男の人は両腕の中に僕を抱く。
男の人は僕を見るなり頭を撫でてくれた。


「お前を探していたのは、商品にする予定の者ではなかったのに、馬鹿な部下が一緒に発送してしまったんだ。お前は俺のだからな。店に返せというのは失礼だから、それの二倍で買い取ろう。こいつの買値は資金にしていい。」


そう言って僕を抱き締めたまま、厳つい男の人を手招きしていたんだ。
銀色の硬そうな箱を開けると同時に、僕を抱いた男の人は車に乗った。

僕は人間になれなかったんだと思ったけど、不思議な事に気付いた。
僕には人間の手足や身体がある。フワフワした布を身に纏い尻尾もあった。
正(まさ)しく、目が覚めた時に見たあの仲間達の姿に似ていたんだ。


「名前はアメで良いな。…アメは俺を覚えてないだろうな。」


覚えてない?
その言葉に泣きそうになる男の人の顔を見た。
引っ掛かるものが記憶の中にある。
昔、僕の意識が無くなる寸前に見た、泣いていた少年に似ている。
聞きたいけど僕は言葉がまだ喋れない。


「あー。にぃ〜。」

「なにか話したいのか?言葉を覚えような。あと人間としての生活の仕方もな。」


その日から言葉の勉強と人間としての暮らし方の勉強が始まった。

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