《MUMEI》

 ──その日の晩の事である。




 紫苑は桜の傍らで、すうすうと寝息を立てていた。




 桜は、というと。




 まだ目を覚ましていた。




(──よく寝ておるな‥)




 そう思いながら、天井に目を向ける。





(狐叉はどうしているだろう‥)




「‥!?」




 慌てて、飛び起きる。




「狐叉‥!?」




「結界を張りに来た」



「寝ていなくて‥大丈夫なのか‥?」




 こくり、と狐叉が頷く。




「妖月は──」




「ぁぁ‥彼女なら‥‥‥」




「ま‥待ってなのだ狐叉ぁー!」

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