《MUMEI》
秘薬
海賊の一人が言った。
「疑いを晴らすのは簡単です。協力してくれますか?」
「どうすればいい?」静果は震える思いで聞いた。
「お嬢さまのおへその下には、消えない刀傷があります。見せてください」
「あたしは今裸なんだよ。そんな場所見せられるわけないでしょ」
すると、ドボンと手を突っ込んで足首を掴んできたので、静果は慌てて叫んだ。
「わかった、見せるから!」
海賊は手を離した。
静果は両腕で胸を隠したまま、おへそが見えるまで湯船の中で立ち上がった。
「キレイなおなかですね?」
「医術は進歩しているのよ」静果はまたしゃがんだ。
「もしも傷がなければ、素っ裸のまま広場へ連れて来いと。これはお頭の命令です」
「嘘よ。母上さまがそんなこと言うはずがない」
「何が母上さまだ!」
皆は一斉に湯船の中に両手を突っ込み、静果の両足を掴んで力ずぐで持ち上げようとした。静果は暴れて抵抗した。
「待ってください、待って!」
一旦海賊たちの手が止まる。
「逃げも隠れもしないから、服を着させて」
「ダメだ」
また強引に持ち上げようとする。静果は声を張り上げた。
「わかった待って、せめてタオルは巻かせて!」
海賊たちは顔を見合わせると、静果にバスタオルを渡した。
彼女は湯船から出ると、急いでバスタオルを体に巻いた。
海賊に荒々しく腕を掴まれて引っ張られる。
「来い!」
静果は裸足のまま小走りになった。
「言う通りにしますから、乱暴はやめてください」
「そいつはどうかな。へへへ。お頭が許してくれるかな?」
静果は生きた心地がしない。広場に入ると、先ほどはお頭の娘だから遠慮していた海賊たちも、スパイと見るや淫らな目を無遠慮に向け、バスタオル一枚のセクシーな静果に容赦なくヤジを飛ばした。
「言う通りにすると言ったな?」
「え?」
広場中央には大きな台が用意された。四隅には手枷足枷が付いている。
「嘘…」
「寝ろ」
万事休すか。悪夢なら醒めてほしい。
静果は怖々台に仰向けに寝た。海賊が両手両足を拘束する。
バスタオルで大切なところは隠されているとはいえ、大の字で手足を縛られては、風前の灯火だ。
歓声が湧いた。お頭が金ピカ衣装で登場した。
真っすぐに台まで歩くと、静果を見下ろした。
「会った瞬間に偽物だとわかったわよ」
氷の微笑。
「じゃあ、わざとお風呂に?」
「そうよ。よくも娘を思う母親の気持ちを利用したわね」
静果は額に汗が滲んだ。確かにひどい。激怒して当然か。
「さてと、どうされたい?」
静果は無言。下から頭を見すえた。
「この荒くれ男たちを放とうか?」
海賊の荒い息づかいが聞こえる。まずい。メチャクチャにされてしまう。
「あなたの体内に赤い血が一滴でも流れていたら、そんな酷いことはできないはず」
静果が言うと、お頭はすぐに切り返した。
「私の体の中に人間らしい血なんか、一滴も流れてないわよ」
静果は口を真一文字にして横を向いた。
「いい度胸してるわね。普通の小娘なら泣きながら哀願してるとこよ。さすが女スパイ」
「何言ってるの。ビビってるわ」
静果の一言に、頭はいきなり怒った。
彼女の顎を指で掴むと、グイッと上向かせた。
「あっ…」
「舐めてる?」
「舐めてません」
「舐めてる?」
「舐めてません」
悔しいけど怖い。静果は腹筋に力を入れて身構えた。
「私を舐めた罰として、ゲームに参加してもらうわよ」
「ゲーム?」
「例のあれを」
「はっ!」
側近が白く丸いものをお頭に手渡した。お頭は蓋を開けると、静果に言った。
「これが何だかわかる?」
静果はじっとクリームを見つめた。
「これを10分の1に薄めて秘部にひと塗りすると、女はたちまちのたうち回っちゃうの」
静果は唇を噛んだ。
「あなたには薄めないで原液のまま塗ってあげる」
海賊たちは想像して興奮した。静果は必死にもがいた。

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