《MUMEI》
残酷ゲーム
静果はもがくのをやめた。手枷足枷でガッチリ固定されては、自力でほどくのは無理だ。
「やめなさいよ、そういうことは」顔を紅潮させて睨む。
「やめないわよ。原液のまま塗ったら、女の子はどうなってしまうのか、見てみたいじゃない」
「悪趣味にもほどがあるわ」
「黙りなさい」
お頭が指でクリームをすくうと、静果の下半身に近づけた。
「ちょっと待って、ちょっと待って!」
慌てふためく静果を楽しんでいる。お頭は真っ赤になった静果の顔を覗き込む。
「許してほしい?」
「え?」
哀願は悔しい。静果は黙った。
「ふふふ。よく訓練されたスパイね。でもここは訓練のしようがないもんね」
お頭の手が秘部に近づく。静果は両脚をしきりに動かした。
「やめなさいよ」
「お黙り」
あっさり塗られてしまった。
「あっ…」
いちばん敏感なところに秘薬を塗られてしまった静果。彼女は深呼吸すると、唇を噛んだ。
(負けてたまるか)
どんな快感の大波が押し寄せてこようと、敵の前で乱れてたまるか。
静果は気持ちを確かに持った。
お頭は意地悪な微笑を浮かべ、静果の表情の変化を楽しんでいる。
海賊たちは身を乗り出して静果を見ていた。こんな純粋そうな美少女が、声を上げてのたうち回る姿を見るのは興奮する。
静果は呼吸が荒くなった。大勢の男たちが見ている前で乱れた姿を晒すのは屈辱だ。何としても耐えなくては。
「……」
塗られてから何分も経過している。静果は不思議に思った。理性が高い女には効かないのか。何も起こらない。
「ククク、わははははは!」
突然お頭が笑い出した。
「ただのクリームよ。びっくりした?」
静果は一気に力が抜ける。海賊たちは声を上げて残念がった。
「あなたには、もっと残酷なゲームを体感してもらうわ」
全く許す気はないようだ。
「何をする気?」
「痛い目に遭わせてあげる」
痛い目と言われたら、さすがに緊張する。いったい何をするつもりか。
「ほどいてあげさない」
「え?」
側近があっさり静果を自由にした。
「これを着るのよ」
側近が持ってきたのは柔道着だ。嫌な予感がする。
静果はバスタオルの上から柔道着を着た。
「バスタオルは取りなさい」
命令には逆らえない。海賊たちを放たれたら終わりだ。犯されてしまう。
静果はバスタオルを返した。
歓声が湧く。巨漢が現れた。筋肉のお化けだ。
「嘘でしょ?」
焦る静果の目の前に、巨漢はやる気満々の笑顔で立ちはだかる。
「僕の名前はコング。身長185センチ体重185キロ。普通身長と体重が同じ数字ってないと思わない?」
聞かれても困る。静果は怯んだ。
「僕の特徴は無慈悲にして卑怯。卑怯にして意地悪。意地悪にしてヤらしい。得意技はピストン運動。くばぐはぎひひい!」
静果は思わずお頭を見た。
「勝てるわけない相手と無理やり戦わせて、女がコテンパンに痛めつけられるのを見て楽しもうっていうの!」
「そうよ」あっさり即答した。
「悪魔的思考ね」
「お黙り。母親の愛情を逆手に取るほうが罪は重いわよ」
「それは…」静果は反論に窮した。
「大丈夫よ。ゲームで散々いたぶったら、そのあとにゆっくり拷問してあげるから」
無謀な計画だったか。いや、ずさんな作戦だったかもしれない。
「ねえ、取引しない?」静果が言った。
「取引なんかしないわよ」
「さっき盗聴器を仕掛けたの。この会話も警察に筒抜けよ」
「良かったじゃない」
ダメだ。通用しない。
「お頭、始めていい?」コングが聞いた。
「いいわよ。少しは手加減してあげなさい」
「プロの腕前、手加減しなーい!」
古過ぎてギャグだと気づいている者もいない。
「滑った恨みは君に晴らーす!」
コングが突進。よける静果。コングが振り向きざまに顔面に右ハイキック!
入った。静果は両拳を構える。コングは笑った。
「やるね」
とにかく戦う以外に道はない。

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