《MUMEI》 深夜の駐車場で. …………ぜんぶ、嫌になった。 なにもかも、虚しく感じて、 今までの自分の人生に、価値を見出だせなくなった。 生きる『意味』を、見失ってしまったんだ………。 どうやって歩けばいいのか。 どうやって呼吸すればいいのか。 そんな単純なことすら、 もう、分からないんだ−−−−−。 ◇◇◇◇◇◇ ………不意に。 ガサゴソ…と、モノをあさる音がすぐ隣から聞こえ、俺はゆっくり目を開いた。 稟子が風呂から戻ってくるのを待っている間に、いつのまにか眠ってしまったらしい。 《………世界中で不況が叫ばれる中、アメリカの大統領が国の再建へ向けての対策を………》 ぼんやりとしている思考の中に、ラジオから堅苦しいニュースが流れてくる。最初に聞いていた音楽番組は終わってしまったようだ。 そして………。 …………ガサガサ…ゴソ…バサッ! やっぱり、だれかがトラックの中をあさっている。 …………なんだ?? ヒトの車で、なにしてんだ?? まさか…………。 車上荒らし?? 俺は慌てて身体を起こす。そして、助手席に目を向けて、 −−−−驚いた。 隣にいたのは、オンナだった。 彼女は俺のTシャツを身に纏い、真剣な顔をしてダッシュボードの中を物色している。 オンナは俺が起きたことに気づき、こちらを振り向いた。 そして、眉をしかめて呟くのだ。 「やっと起きたわね」 「……わっ!?」 俺は驚いてのけ反る。するとオンナは気を悪くしたのか、眉を尖らせた。 「なに?その反応。オバケでも見たような顔しちゃって」 ホントに失礼なヤツ!とぶつくさ文句を口にする。 そのオバケ……いやいや、オンナは、紛れもなく稟子だった。 彼女はすっかり化粧を落とし、すっぴんで助手席のシートに腰掛けていた。シャンプーもしたのか、まとめていた長い黒髪は濡れたまま肩下までおろろされている。 なによりも気になったのは………。 俺はドギマギしながら、小さな声で言った。 「その格好、ヤバくない??」 . 前へ |次へ |
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