《MUMEI》

「──くら」




 呼ぶ声が、する。




「桜」 




目を、開けると。




「紫苑‥?」




 紫苑だ。




(いつの間に私は眠ってしまっていたのだ‥?)




 昨晩、妖月達と百鬼夜行を見物していた‥所までは覚えているのだが。




(妖月と狐叉は帰ったのか──)




「──ぁ!」




 その声に、桜がびくりと肩を上げた。




「なっ‥どうした‥?」




「見て!」




 紫苑が、空を示した。




「ほらっ、あれ!」




「‥あれ‥?」




 曙の空に、白い光。




(‥月‥?)




 そう──月が、まだ沈まずに残っていたのである。

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