《MUMEI》
まだまだ春休み(祐視点)
俺の専門学校の入学式は、高校より遅かった。


「確か今日は高校の入学式よね」

「だよな。あ、沙希醤油取って」

「はい。…味薄かった?」

「俺にはちょっとね」


秀さんにも指摘された事があったが、俺は少し濃いめの味が好きだった。


「聡史(さとし)は丁度いい?」

「あぁ。これとかうまいよ」

「残念! それ俺が作ったの」

「「…」」


沙希と今の彼氏


聡史君の間に微妙な空気が流れた。


ちなみに、今俺達三人が夕飯を食べているここは、二人が同棲している愛の巣で


俺は、同じアパートの違う部屋に住んでいる。


春休み、雅樹に会えなくて落ち込む俺を見かねて沙希が一度部屋に呼んでくれてから、この光景は当たり前になりつつあった。


「ごめんね、夜はすぐ帰るからさ」

「「…別に」」


(可愛いな)


聡史君も沙希も純情で


お人好しで


悪いとは、ほんの少し思いながらも、俺はそれからも二人と夕飯を食べるのが当たり前になっていった。


…それが、雅樹が沙希に頼んだ事だったと気付くのは


ずっと、後になって


雅樹が俺の部屋に泊まりに来た時の事だったりする。

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