《MUMEI》

必死に記憶をたどってみるが、さっぱり思い付かない。

なんとなく、喉元までおもい出しかけているような気もしなくもないのだが。





…………あ゙〜〜〜〜〜ッ!!


もうッ!!


イライラすんなぁッ!?





おもい出せないイラ立ちをパワーに変えて、俺は力強くアクセルを踏み込んだ。











麓町についたときには、夜も完全に明けていて、

猛烈に腹が減った俺は、トラックが停車出来るようなコンビニに寄った。

車を停めてから、助手席を眺める。

稟子は相変わらず気持ち良さそうに眠っていた。





…………呑気なヤツ。





俺は浅くため息をついて、トラックから降り、コンビニに入った。


早朝のため、店はガランとしていた。

店内には、カウンターにいる店員と、今入って来た、俺のふたりだけ。

店員は俺の顔を一度見ると、興味がないのかすぐに目を逸らし、いらっしゃいませ、と独り言のようにぼそぼそと挨拶した。

俺は入口でカゴを手に取り、まっすぐ惣菜コーナーへ向かう。

惣菜コーナーは、あまり商品が並んでおらず、ガラガラだった。この時間帯は、ちょうど商品の入れ替えと重なるので、賞味期限が切れた食べ物は廃棄されてしまうのだ。

数少ない惣菜をじっくりながめながら、コンブとマヨシーチキンのおにぎりを1コずつと、焼きそばパンをカゴに放りこむ。

もちろんぜんぶ、俺のメシだ。

それから、悩んだ。


稟子のメシを、どうするか、と。


あれだけ傍若無人な振る舞いをされて、迷惑を被っているのだから、食事を用意してやる義理などない…。



………けど。



ここでアイツの分を買わなければ、あとで恐ろしい事態が待ち構えているような気がした……。





…………仕方ねーか。





俺はサンドイッチを適当に選び、カゴに入れた。そして飲料水が置いてある冷蔵庫へ向かい、お茶とスポーツドリンクのペットボトルをカゴに入れた。


レジへ向かうまえに、雑誌コーナーに立ち寄る。


稟子のわがままのせいで、なんかイライラするから、気が紛れるような、ストレス発散出来るような………


そう。


エロ本、とか、ね………。





…………だって!!


仕方ないでしょッ!!

俺は、健全な、日本男児なんですからッ!!





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