《MUMEI》

それでも、花禀様の幸せそうな笑顔を見る度に──僕は嬉しくなってしまう。





「──篠河ぁ」

「はいっ、花禀様」

「後で来て? 私の部屋」

「ぇ‥」





ティラミスでご機嫌になられてらっしゃるのか‥お嬢様は天使のような笑顔を僕に向けた。




‥でも不思議だ。





お嬢様が僕をお部屋に招いて下さる事なんて滅多にないし‥‥‥。




「篠河、お代わり」

「畏まりましたっ、ただ今お持ち致します──」





少し‥‥‥何かが引っ掛かるような気がした。





気のせいだといいんだけど‥。

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