《MUMEI》 五 春の雨「‥‥‥ん?」 しとしとと、雨の降る音。 「‥いきなりだな──」 桜は溜め息をついた。 (‥蹴毬が出来ん‥) だが、すぐに思い直す。 (何も外でしか出来んという訳でもあるまい──) 蹴毬の玉を取り出すと、勢いを付けて放り投げる。 一。 二。 三。 四。 「──紫苑様っ‥!?」 「おお──蓮宮」 玉を蹴り上げながら、何でもなさそうに桜が言った。 前へ |次へ |
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