《MUMEI》
新たな発見
その夜。


《相変わらずお前の周りには、個性豊かな人間が集まるな》


涼風委員長と、同級生の緑川の様子を報告すると、忍がため息まじりにそう言った。


(まぁ、あの二人はそうだけどさ)


俺は、元部長と大志さんに課題を出されてから、新たな発見があった。


《どうした? 疲れたか?》

「い、いや!」


(やっぱり優しい忍は慣れない)


俺はつい大声を出してしまった。


《じゃあ、何だ?》

「うん。名前をちゃんと覚えようとして、気付いたんだけどさ」


ただの同級生でなく、ちゃんと緑川の名前を覚えようと思った時


「俺、今までちゃんと人を見てなかったなって」


緑川の容姿や口調を、俺は今日初めて改めてちゃんと見た気がした。


(見た目平凡でも、あんなに個性あるのに)


三年目にして、俺は初めて緑川を知った。


《それだけお前の視野が今まで狭くて、今は広がったって事だな》

「うん」

《…楽しそうだな》

「そうか?」

《あぁ》

「忍は元気無くなってきてないか?」


それは何気ない一言で


俺が感じた正直な感想だった。


《疲れている。もう寝る》


忍はすぐに電話を切った。

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