《MUMEI》
『Lee』
心の中で言い訳しながら、しばらく雑誌コーナーのまえでうろついた。明らかに不審者だ。

なんとなくだが、店員の冷ややかな視線を背中に感じるような気がしたが、無視した。





………べっ!


別に、悪いコトしてんじゃねーもんなッ!!


自然の摂理ってヤツだよなッ!!





自分自身を励ました。

そして、一冊のエロ雑誌の表紙にでかでかと書いてある見出しに、目が吸い寄せられる。





《ロリ巨乳一直線》





…………ロリ巨乳、ね…。


すっげー見出しだな、オイ。


俺、別にロリも巨乳も趣味じゃないけど。


オカズにするなら、これで充分かな。





心が決まった。


俺がそのアダルト雑誌に手を伸ばしかけたとき、


「あ゙〜〜ッ!!ダルッ!」

「ちょー眠いんですけど〜」


喧しい若いオンナどもの声が聞こえ、俺はビビって咄嗟に、アダルト雑誌の隣に置いてあったTVガイドを手に取った。





………って、中坊かよ、俺はッ!!





ひとりでツッコんだ。

素知らぬふりで雑誌をパラパラ広げながら、チラッとオンナどもの声がした方を見遣る。

入口にアホみたいに短いスカートを履いた汚らしいギャル2匹がいた。

朝帰りなのか、脱色した髪の毛はほつれて、化粧も崩れていてバケモノみたいだった。





………なんだ、ありゃ??


新種のアニマルか??





ギャルのひとりが、オッサンみたいに低い声で、限界〜、と唸り出す。


「ヤッベー、もれる!!トイレ、トイレ!」


ギャハハと品のない声で笑いながら、店の奥にあるトイレへ向かった。その背中をもうひとりが追いかけたのだが、急になにかに気づいたように、待って!!と大声で叫ぶ。

なんだよ〜〜??と怠そうに振り返った友達に、ギャルは興奮したように、一冊のファッション雑誌を指差しながら言う。


「見て、見て!!『Lee』がカバーやってるよ!!」


「マジで!!チェック、チェック!!」


なにやら、大騒ぎだ。





…………てか、





『リー』??





それって、ラジオで言ってたヤツ??





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