《MUMEI》
校門の人だかり
普通の授業が始まって数日後。


「田中君待ってる美形がいるみたいだよ」


職員会議で遅れて部活にやってきた貴志先生が、教えてくれた。


(また、柊か…?)


春休みが終わってから、一度も会っていない柊だから、そろそろ会いに来てもおかしくないだろうと思った。


(またのろけ聞かされるかな)


毎日放課後頼とエイミーのバカップルを見ている俺は、部活を早めに切り上げ校門に向かった。


(優秀な村井がいて良かった)


優秀な副部長がいてこそできる行動だった。


「あ、祐也はん!」

「ほんまや! 祐也はん!やっと来はった!!」

「…何、してるんです?」


人だかりの中心にいたのは、予想外の人物


ロシア人のナターシャとアレクセイの二人だった。


(確かに美形だけどさ…)


まだ柊の方がマシだと思った。


そして、俺の腕を掴みながら、二人は更に意外な事を言った。


「「サントスは?」」

「…え?部活」

「「?」」


(あ、わからないか)


説明が面倒になった俺は、サッカー部が練習している校庭を指差した。


〔な、何だよあんたら!〕


サントスは俺以上に混乱し、ポルトガル語で叫んだ。

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