《MUMEI》
京都の夜桜
「…綺麗だな」

「「せやろ!」」


(人が集まるのもわかるな)


神社の境内にあり、ライトアップされた夜桜は、確かに一見の価値があった。


俺はしばらくその美しさにみとれていた。


それはサントスも同じで


〔来て良かったかも〕


ポツリと呟いたサントスに


〔…俺も〕


俺は、笑顔で言ってみた。


〔日本に来て良かった。正直、日本のサッカー馬鹿にしてたけど、真司に会えたし〕

〔それ、今度真司に言ってやって〕

〔じゃあ、俺にも日本語教えて〕

〔俺で良ければ〕


そうして、俺達は笑い合い


その後、他の皆と合流し、秀さんお手製の花見弁当を食べ、またすぐにバスに戻った。


(今度は他の皆とゆっくり来たいな)


忍からは花見は『桜を見るのはついでで単なるバカ騒ぎだ』と教わっていたが


実際の花見はそうではなく、楽しかった。


(忍に楽しかったって言ったら怒るかな?)


帰りのバスの中で、俺はそんな事を考えていた。


京都、滞在時間僅か数時間。


その間に、ある出来事が起こっていた事に、俺はまだ気付いていなかった。

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