《MUMEI》 幸せの隙間に入り込む闇花見の報告をした後、忍はしばらく喋らなかった。 《…京都、だと?》 「う、うん」 《どの位いた》 「え、三時間、…四時間近く、かな」 《…何も無かったか?》 「何もって?」 《無いならいい》 「…何か、おかしいぞ、忍」 (何か、焦ってないか?) 「京都、行っちゃいけなかったか?」 忍の反応がいつもと違い過ぎるから、俺は不安になった。 《違う》 「でも…」 《場所の問題じゃない。状況の問題だ》 「状況?」 《とりあえず、調べる。…祐也》 「な、何だ?」 《気を付けろよ》 「…何に?」 《とりあえず、一人にはなるな。あと、あまり遠出はするな》 「理由は?」 《…》 「なぁ、理由は!?」 今が楽しいから。 あまりにも、楽しいから。 忍の今の反応が俺は怖かった。 「理由教えろよ!」 《まだ言えない》 「何で!」 《確認してみてだ。多分奴は言わないから、調べるが》 「…奴?」 (誰だ?) 忍は名前を言わなかった。 しかし、それは言いたくなかっただけだと、すぐにわかった。 《お前も知っている男だ》 忍はそれだけ言って電話を切った。 前へ |次へ |
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