《MUMEI》 その男の名前俺と忍が知っている男 俺の事も、忍の事も知っている男 …俺の、過去を知る、俺と忍以外の男 旦那様は自殺 忍の父・護は去年亡くなった。 残っているのは、一人しかいない。 「弘也か」 かつて、俺を旦那様のペットと呼び 俺を殴り 肋骨を折り 滅茶苦茶に、犯した男。 (出張にでも、来てた…か?) 春日グループの本社は関東圏にあり、普通なら、いるはずのない、弘也。 「ハッ、俺はつくづく、厄介な人間と会う確率が高いらしいな」 もし、弘也が俺を本当に、見かけたら… 『お前、…やっぱり、ペットだけあるよ…』 意識を失う直前 最後に聞こえた弘也の声を、今でも俺は覚えていた。 (…来るなら、来い) 俺は、あれから強くなった。 「強くなった、んだ」 震える体は、武者震いだと信じたかった。 前へ |次へ |
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