《MUMEI》

「わかっちゃった。」
下唇を舐めてから笑う高柳樹にはない癖だ。


この癖はアヅサの癖だ。

俺には出来ないから笑わないように心掛けている。



「俺には
 分からない
  分かりたくない」
アラタは下を向いて顔を合わせないようにする。雑念に囚われないためだ。


「俺も分かってもらわなくていいから。
樹がいればいいし。


 うわ、
ほせー首。傘の柄に嵌まるんだものな。
白い首、手、腰。

いいね、
何処で売ってるの?」
アラタの首、手、腰へと樹の腕が這い回った。

抵抗する気力もなく、なすがままになる。


そして
耳元でぞっとする程甘い音色で囁かれた。




「アラタ、

  そのカラダ 俺に


    頂戴?」

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