《MUMEI》
ヒロイン敗北
オクトパエスは、起き上がれない夏希に話しかけた。
「ルールは聞いたな。2回まで降参できるって?」
「ええ」
夏希は服がびしょ濡れだが低姿勢だ。こんなモンスターには逆らわないほうが賢明だ。
「俺様が君から3回ギブアップを奪っていじめてもいいんだが、俺はジェントルマンだ。そんなことはしない」
夏希は起き上がった。
「ジェントルマン?」
「確かに悪趣味は認める。読んで字のごとく、オクトパエスのエスはドSのSだ。女の子の困り果てる姿はたまらん」
悪趣味を通り越して悪魔的行為と思ったが、夏希は黙って聞いていた。
「ルールはルールだ。行っていいぞ」
夏希が驚いた顔をすると、オクトパエスは長い脚を出した。
「それとも俺に3回ギブアップを奪われて、体も奪われたいという願望でもあるのか?」
「いえいえ、ないです」
夏希は引きつった笑顔でそそくさとその場を去ろうとした。
「頑張れよ」
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」と敬礼ポーズ。
夏希は第1関門クリア。
「悪い人ではないかも。まあ、友達にはなりたくないけど」
独り言を呟いていると、またすぐに幕が見えてきた。
「今度は、×だ!」
飛び込んだ。幕を破るとWベッドの上。
「助かった」
夏希はベッドから下りて行こうとしたが、せっかくシーツもあるし、靴を拭こうと思った。
夏希は靴を脱ぎ、服も脱いだ。
下は下着ではなく、いざというときのために水着を着ていた。下着と水着ではやはり違う。
鮮やかなブルーのビキニが色っぽい。夏希は服を固く絞り、バタバタさせた。
「ふう」
そしてシーツを引っ張る。
「あれ?」
なぜかベッドには手枷足枷が付いている。不思議に思っていると、人影が。
「だれだ?」
「ばー!」
さっき広場にいたコングだ。
「嘘、×だったの?」
コングは水着姿の夏希を見て、目をハートにした。
「ビ、ビ、ビーキニー!」
両手を広げて襲いかかる。夏希は鼻に右ストレート!
「あっ…」
コングは鼻を押さえて痛がる。
「やったね。もう謝っても許さないよん」
コングの目が危ない。夏希は負けずに右ローキックから左ミドルキック。しかしコングの大振り右フックが唸りを上げる。
交わした。しかし危険だ。あんなフックを食らったら一発で終わる。
「行くよん」
コングが本気だ。凄いフットワーク。ただの怪力男ではない。
夏希も防戦一方にならないように右ジャブ、左フックと攻める。
コングがいきなり屈む。夏希のボディに頭突き。夏希はバッグステップしたと同時にコングの顎に右膝蹴り!
「がっ…」
コングは後退。
「強いね。さっきのおなごとは違う」
「ケガをしないうちにそこをどきなさい」夏希が両拳を構えながら睨む。
「ぐふふ。お楽しみはこれから」
再びコングが突進。ボディを狙ってくる。夏希もフットワークで回り込む。
「ボディブローでお寝んねさせて、ベッドに手足を縛ってから起こして水着を剥ぐ。ぎひひ。覚悟しな」
「そんなこと絶対させない」
「させないって無抵抗ではなすがままでしょう」
「うるさい黙れ!」
夏希は怒った。猛然と前に出て左ハイキック。足を掴まれた。そのまま押し倒す。コングが上になる。夏希ピンチ。
「プロの腕前、手加減しなーい!」
コングは顔面にパンチの雨を降らせるポーズ。夏希は思わず両手を出したが両手首を掴まれた。
「しまった!」
コングは怪力で両腕をクロスさせて片手だけで押さえる。
「詰みじゃないこれ?」笑顔のコング。
「うるさい!」
夏希は必死に背中に膝蹴り。しかしコングは一気にストマッククロー!
「ああ…」
本気で胃袋掴み。容赦ない。夏希は泣き顔で両足をバタバタさせたが耐えられるわけがない。
「やめて、降参、降参」
「ダー!」
コングが両手を上げて歓声を浴びるポーズ。
「悔しい…」
夏希はおなかを両手で押さえて立ち上がれない。

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