《MUMEI》
一生の別れ
「ゆ、ゆきおさん……手が、痛い。はずして?ゆきおさんのこと触れない……」

前に水瀬が、痴漢に襲われたときに相手を上目遣いで見て、優しく囁き油断させた隙に逃げたらしい。
一呼吸置いて、水瀬の言葉を思い出せた。
現状も違うし効果がある確証もないけれど。


「……痛いの嫌?」


「いや……。」

頷きながらおうむ返しで応える。


「綺麗な目だね、バターで血走ってる……君が、俺に虐げられて良かった。」

まるで、最期のお別れみたいだ。


「先生?」

手錠が外された。
突然やって来た自由に動揺してしまう。

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