《MUMEI》

「大切な人の‥為‥?」

「ええ、だから──黄羽にとって貴女は──本当に大切だったのね。──今も」

「雪野さん‥それは‥?」

「ぁ‥これ? 一度だけ黄羽が私にくれた物なの。匂袋なんだけど──もう香りは抜けちゃって」

「綺麗な刺繍──」

「六花を象ってるんですって。私の小雪って名前にちなんで」

「──六花‥」

「まぁ、これを大事に持ってる必要もないんだろうけど──何でかずっと持ってるのよね」




 大事そうに、匂袋を両手に包み込む雪野さん。




「女々しいわよね──嫌いだって分かってる相手がくれた物を‥形見みたいにずっと持ってなきゃならないなんて」

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