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《MUMEI》 「我舞うは焔の舞。願わくば汝も共に踊らん。 【烈火舞踊】!!」 詩でも吟じるように朗々と紡がれた言葉は、とある奇跡の行使に必要な『詠唱』と呼ばれるもの。そしてその奇跡とは―― ――魔法 自然の理から逸脱した文字通り魔の法、神をも恐れぬ悪魔の御業である。しかしそう呼ばれたのは遥か昔のこと。今や魔法は必要不可欠にして極当たり前の存在となった。当たり前とは言ってもやはりそこは悪魔の御業。少女の憎悪を乗せた火炎は人一人殺して有り余る威力を持っていた。 「死ねぇぇぇえええっ!!」 少女の絶叫と共に無数の火球が舞うように不規則に男に襲い掛かる。対して男は微動だにしない。誰もが男の死を確信し、笑みを零した。だが 「はあッ!」 男が腕を一薙すると、火球は一つ残らず消え去ってしまった。少女を含め人々は驚愕し困惑した。何が起こったのかと。そして恐怖する。己が喧嘩を売った相手の強大さに。男は何も魔法を使っていない。ただ魔力だけで高密度の魔法を打ち破ったのだ。魔力は魔法として放つから強い。魔力を魔力として使っても大した結果は望めない。だというのに男は少女の魔法を打ち破ったのだ、相当な実力差があることが窺える。しかも少女は中々の実力者。それと比べてこれなのだから、人々にとって男の実力は未知の領域と言って良い。皆が自分たちと少女の死を覚悟した。それを知ってか知らずか、男は少女に近づいていく。だがその歩みを遮る者がいた。 「お待ちください! この子にはきつく言い聞かせますし何だってあなたの望み通りに致します! だからこの子だけは、この子の命だけは…!!」 一人の老婆だった。この必死な姿から察するに、少女の祖母なのだろう。だが男が止まることはなく、乱暴に老婆を押し退けて少女の目の前に立つ。老婆の顔は絶望に染まり、これから起こるであろう惨劇を見まいと両手で顔を覆った。少女は恐怖のあまり動くことが出来ず、大粒の涙をとめどなく流しながら男を凝視していた。そして、黙っていた男がついに腕を振り上げる―― 前へ |次へ |
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