《MUMEI》

「私──知らなかったんだ。何も‥」

「そりゃそうよ、言ってないもの」

「‥でも‥」

「もう止めましょ? 終わった事よ」




 雪野さんが、笑う。




「ちゃんと、幸せになりなさいよ?」

「──ぇ」

「貴女が黄羽不幸にするような事があったら、私が奪うかも知れないわよ? 彼の事」




 そう言われて、目を円くしたら。





「ま、それはないだろうけど、ね」




 呟いて、雪野さんが立ち上がる。




「黄羽が来たら言っといて。『匂袋ありがとう』って」

「黄羽が来たら言っといて。『匂袋ありがとう』って」

「──ぁ‥うんっ、分かった‥」

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