《MUMEI》

お邸に響くピアノの音。





「またお上手になられましたね──お嬢様」

「ほんとっ?」

「はい」

「やった♪」





花禀様──嬉しそうだな‥。





神山さんといる時──花禀様は本当に楽しそうにしてらっしゃる。





それは‥やっぱり‥‥‥。





いやっ、冷静になるんだ篠河っ‥。





花禀様が楽しそうにしてらっしゃるからって‥何もそうだとは限らないんだから‥。





「篠河君、私ちょっと買い出しに行って来るわね──」

「ぁ‥森下さんっ」

「?」

「僕も‥行っていいですか‥?」

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