《MUMEI》 「雪野が‥?」 「うん。『匂袋ありがとう』って」 「───────」 「凄く大事そうにしてた──」 「まだ‥持ってくれていたとはな‥」 アゲハ君は、かなりびっくりしたみたいだった。 「もう‥とっくに捨てたものだと」 「捨てるはずないよ──だって小雪様、黄羽様の事大好きだったんだもん」 「サクヤ‥」 「?」 「‥‥‥‥‥‥‥」 ただ、黙って。 手を‥握ってきた。 黒い髪が、風に揺れて。 青い瞳が、空を映して。 その横顔は──あの頃と変わらない。 前へ |次へ |
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