《MUMEI》

                                      俺のカラダを……


 アヅサに


      渡す



雨が力強く降りしきる。

みるみるアラタから体温を奪っていく。
畏怖の対象を前に情報処理が遅れる。喚いて暴れたい衝動を必死に堪えた。



実のところ堪えるつもりはなかったが、樹が強く手首を抑えるせいで脈打つ血の巡りが伝わり自分の存在を知覚させ、踏み留まる。


言葉の必要性は何処にあるのか。

真実は触れ合うことだ



アヅサの言葉が血と共に脳内を廻る。


いつの間にか雨より生暖かいものが頬を流れていた。




アラタは目の前にある男の形をしたものは

アヅサを殺した体でアヅサを語る恐ろしい魔物と見なす。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫