《MUMEI》

つい‥い辛くて出て来てしまった‥。





「さて──」





チラシを見ながら、森下さんが言った。





「今晩は何がいいかしら」

「昨日はビーフシチューでしたし──魚を使って何か‥」

「あら、舌平目がお買い得だわ──」

「本当ですね」

「これでムニエルなんてどうかしら。ぁ、カリフラワー半額ですって」

「───────」





何だか主婦みたいですね──森下さん。





「──ほらっ、これも美味しそう」

「そうですね──。‥ぁ」





──あれは‥。





「何か見つけた?」

「ぁ‥はい──」





まだ少し早いけど──毛糸を買って行こうかな。





「すいません、ちょっと手芸店を覗いて来てもいいですか?」

「ええ、勿論」

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