《MUMEI》

◇◇◇




 あの匂袋は‥僕が唯一小雪の為に作らせた物だ。





 僕は、執拗につきまとう彼女にうんざりしていた。




『いい加減にしろ‥何度言えば分かる』

『私は后よ? 貴方の』

『‥‥‥‥‥‥‥』




 確かに、そうだった。




 けれど、認めたくなかったんだ。




 それから‥二年が経とうとしていた。




『何? 珍しいわね、貴方が私を呼び出すなんて』

『‥‥‥‥‥‥‥』




 僕は、無言でそれを差し出した。




『‥匂袋‥?』

『‥ぁぁ』

『素敵──』




 それを見つめる小雪の瞳は、珠のように輝いていた。




◇◇◇

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