《MUMEI》

大半が本や書類だからああやって片づければいいかなとか、あの机の辺りをちょっと片づければあっちに荷物が置けるなとか。

僕は片付けたり料理したり洗濯したりするのが好きで、華やかなショーに出ている時よりシーツを干している時の方が居心地が良かった。

だからメイドの後をついて行ってはお仕事のお手伝いをして、可愛がられていたっけな。


シーツ…といえば、僕と彼女が一緒に寝る筈の…ベッドは?


「何キョロキョロしてんの?」

お茶を煎れてきてくれた彼女が戻ってきて僕の隣に座ってくれた。

といっても隣しか空いてるスペースが無いんで、そうなるんだけど。

「あ…メイアイアスク…(聞いてもいいかな?)」
「ちょっと待ってよ、めんどくさいんだな…あんた日本語話しなさい」

”ニホンゴ”って言うのはジャパニーズの事で”シナサイ”は命令だから、日本語を話せって言ってるのかな。

「ヤ…あぁ…はい、ぅわッかりますたι」

日本語か、まだまだ正しく言えているか分からないんだけど、頑張れば彼女ともっともっと話せるんだ。

甘いお茶を飲みながら、質問したかった言葉を一生懸命に調べた。

「ん、どうした」
「一緒に寝るは…ドコでっすか?」

そう言うと、彼女は僕の頭に拳を思いっきり落としてきた。

「あぅぁーι」
「やっぱお前それが目的か!」

何か、それだけが目的だと思われてしまったみたいで、彼女に怒られてしまった。

「違う違うι…それだけ違うι」

それも目的の一つだけど、それよりももっともっと大きな目的がある。



あなたの中の一番になる事。

あなたは僕の中で一番だから。



「…好きです、あなた…忘れられない…僕は」


あのショーで一目見た時から、貴方が忘れられなくて…。

こんなに人を恋しく思ったのは生まれて初めてだった。


「これは…愛です…恋です…」

日本語は言葉を丁寧に言う時、後ろに”DEATH”を付けなければならないらしい。

何か変なカンジがするけど…それを言うと彼女の表情が変わり、横を向いてテレビに視線を反らしてしまった。

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