《MUMEI》
「ホレ、おめでとう。」
俺は見逃さなかった。七生が水瀬に何か手渡した。
「要らないよ消しゴム!
しかも角減ってるし!」
水瀬は机の上にモノ消シを置く。
「遠慮するなよ」
要らないって断ってんだろが図々しい!
結局、七生の粘り勝ちで水瀬のペンケースにはモノ消シが入っていた。
「じろー、コレなんて読むの?漢字読めない」
「んあ?」
イカン。つい態度に出てしまう。
「目が左側でノ ツ ワの中にタ 変なやつ」
「――――変なやつ?」
「その漢字の横には平仮名の“く”。」
「瞬く?」
……俺何で分かってしまうんだ。
「またたく!」
七生は嬉しさ全開の笑顔で叫んだ。
子供の頃から変わらない屈託のない笑顔。
あれを出されては敵わない。つい、怒りも流されてしまう。
七生は真っ直ぐ乙矢へ向かって走り出した。
「嘘つき乙矢!
なーにが“こさっく”だよ!全然違うじゃん!」
「あそこで七生が納得していれば俺は嘘つきにならなかった。」
乙矢様流石です。素敵。
「俺は悪くない、そっちこそ謝れ!
罰として数Uの宿題写させろ!」
アンタそっちの宿題もやってないんかい!
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