《MUMEI》

会計を済ませ、コンビニの袋をぶら下げながら店を出ると、道路の交通量が増えていた。





…………早く高速乗らねーとな。





そんなことを考えながら、トラックに乗り込んだ。


「……遅いじゃない」


ドアを閉めた瞬間、助手席から稟子の声がしたので、俺はビビる。

振り返ると、稟子は身体を起こして、挑戦的な目つきで俺を睨んでいた。


その顔を見て、


……あれ?とおもう。




さっき雑誌で見た『Lee』の表情に、

どことなく、似ているような気がしたから。




ほうけた顔で稟子を見つめる俺に、彼女は気を悪くしたのか眉をひそめた。


「なに?わたしの顔に、なんかついてる??」


その台詞に俺はハッとして、なんでもない!と答えながら、首を横に振る。





…………気のせいだ。


そういうことに、しておこう。





稟子は俺の態度を怪しんでいたようだが、コンビニの袋を見つけると、急に表情を明るくした。


「なにそれ、食べ物??」


声まで明るい。

俺は素直に頷いた。


「適当に買ってきた」


答えながら、袋の中からサンドイッチとお茶を取り出し、稟子に差し出す。

稟子はうれしそうに、サンキュー!と言い、それらを受け取った。そうとう腹が減っていたのか、豪快に貪りはじめる。



どうやら、俺のチョイスは彼女の好みに当て嵌まったようで、少しホッとする。



稟子の姿を見てから、俺も袋からおにぎりを取り出し、食べはじめた。





少し、して。





いち早く食事を終えた稟子が、ペットボトルのお茶を飲みながら、満足そうに笑った。


「あぁ〜、ごちそうさま!」


ひとり呟いてから、くるりと俺の方を見遣って、満面の笑顔で言った。


「ランチはマックが食べた〜い!!」





…………もう、昼メシの心配してんのかよッ!?


しかも、俺にたかるな!!





能天気さに呆れ、俺はヤダよ、とそうそうに答える。


「マックなんて、どこも駐車場狭いって。ムリです」


「ドライブスルーでいいじゃん。ラクだし」


「こんなデカイ車が、ンなとこスルー出来るわけねーだろッ!!」


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