《MUMEI》

言いながら俺は口の中に、残っていた焼きそばパンを飲み込んだ。稟子は不満げに眉を寄せ、舌打ちする。


「……こういうときしか、ジャンクなんて食べれないのに」


ぽつんと呟いた彼女の言葉に、一瞬眉をひそめたが、とりあえずそのまま流した。

一旦トラックを降り、まとめたゴミをコンビニのごみ箱に捨てて、ふたたび車に乗り込んだ。すぐに出発しなければ。もう時間がない。

俺は稟子に声もかけず、いきなりトラックを勢いよく発進させた。





−−−−それが間違いだった。





動き出したトラックが大きく揺らいだ。その拍子に助手席の稟子が小さな悲鳴をあげる。

嫌な予感がして、そちらに目をやり、





固まった。





稟子が、濡れていた。





………いやいや!!


ヘンな意味でなく!!





先程の衝撃のせいで、彼女が手にしていたペットボトルからお茶が大量に零れたようで、稟子はお茶まみれになってしまったのだ。

突然のハプニングに稟子も驚いたのか、ただ呆然と自分の胸元を見つめていた。

生足には液体がビショビショに滴り、

身体にベッタリと張り付いたTシャツから、彼女のブラジャーの色や柄が、はっきりと透けて見えるくらいに。



なまめかしいその稟子の姿を見て、

俺は耳まで赤くなった。



それと同じくして。



俺の視線に気づいた稟子は、カッと表情を怒らせて、





鼓膜が破けるような大声でわめいた。





「こンの、ど変態!!?」





稟子の怒号の直後、

車内に景気のよいビンタの音が炸裂しのは、


言うまでも、ない………。












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