《MUMEI》
深海魚の馳せる地上
腐爛した月に君の足元が照り映える
互いの体温は測らない
望遠鏡の円で瞬きを繰り返すばかり
微塵も世界を愛せなくて
擦り切れた感情は痛みの錯覚に血で溺れ
有意義な行為は傷を移す
両手を掴まえて
指先から融解してしまう
惨い夜

君の幻聴は優しい
想い出の美しさに泪の雨が降りしきり
記憶の粒 博愛の滴
肩に滲みてゆく
何度となく傷口に擦り込める
音の重量に瞼が落ちた

転がる人形を拾えない
その冷徹な幼さに慈悲を失う
永遠の終焉を悟り
なにもかもが不潔に塗れ
抱く肩さえも汚い
足を浸す泪に月が映る
流れてく人形に
伸ばす 切る

ちぎれた破片
継ぎ合わせ
ピンで耳を止めておく
空匣に配置され歓喜する民衆
執拗に求められる悪徳
訴えられない罪人の首の色彩
確認する間もなく埋もれ
跳ねた水面に飛沫が
弧を描く
幾重にも重なり乱反射

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