《MUMEI》
遅くなった誕生日プレゼント
「くるみちゃん、田中先輩に用事があったんでしょ?」


(負けてないな松本)


スキルアップしていく石川に対し、松本の積極性は更に増していて


厳と石川の間にさりげなく割り込むその姿に、俺は感心していた。


「あ、そうそう! 祐也先輩お菓子、何が好きですか?」

「突然、何?」

「突然じゃないですよ、もう二ヶ月近く経つのに誕生日プレゼントちっとも使ってくれないんだもん!」


石川はよほど怒っているらしく、後半敬語と笑顔が消えていた。


(あ〜、あれか)


『祐也先輩が好きなお菓子、一回だけ一品作りますから、いつでも声をかけて下さいね!』


三月の俺の誕生日パーティーで、石川がそう言っていた事を俺は


「忘れてた」

「ひどい!」

「ごめん。いろいろあって」

「いろいろ?」×3


(ヤバかった、…かな?)


「そう、いろいろ。あ、今から俺の部屋で作るとか、…どう?」

「祐也先輩の部屋? 行く行く!」

「俺も俺も!頼や他の皆ばっかり行ってて俺行ってないし!」


俺の提案に、石川と厳はすぐに食い付いた。


「でも、道具や材料は?」

(そっちの心配か)


松本は、二人を止めようとはしなかった。

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