《MUMEI》

「感心していないでこいつを何とかしろっ‥」




 黒手毬に擦り寄られ、あたふたする桜。




「ところでこいつは一体何の妖なのだ‥?」

「ううむ‥不明なのだ」




「何っ‥?」




(不明だと‥!?)




 呆れずにはいられない。




(‥彼女でも分からんのか‥‥‥?)




「なっ‥おいこら烏帽子を取るなっ」




「どうしたの? さく‥‥‥」




 今度は、紫苑が固まった。




 黒手毬が烏帽子を被ってぽてぽてと歩き回っているのだが、あたかも烏帽子だけが一人歩きしているかのように見える。

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