《MUMEI》 独占欲の塊石川が作ったマドレーヌは、オーブンレンジに入っている段階からかなりいい匂いがしていた。 それは、俺の狭い部屋に充満し、換気扇を付けたところで廊下にも流れていった。 そこに 放課後デートを終えた、バカップル 頼とエイミーがタイミング良く通りかかった。 頼は甘いものがそれほど好きではないが エイミーは、大好きだった。 その結果 ピンポーン (やっぱり、こうなるのか…) 玄関を開けると、予想通り頼が立っていた。 「エイミーが食べたがってる」 「その、エイミーは?」 「祐也の部屋に他に男がいたら嫌だから置いてきた」 「あぁ、そう…」 (どんだけ独占欲強いんだ) 呆れながら、とりあえず作っている石川に、事情を説明した。 「祐也先輩がいいならいいですよ」 そう言われ、俺は出来立てのマドレーヌを二つ頼に渡した。 「祐也さ〜、何で最近戸締まり厳重にしたんだよ」 「…別に。今までが不用心だったんだよ」 頼の何気ない言葉にギクリとしながらも、俺は忍に言われた理由を口にした。 「まぁ、エイミーもそうだし、いいけど」 頼は特にそれ以上言わず、隣に行った。 前へ |次へ |
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