《MUMEI》
ラストチャンス
コングはダウンしている夏希を両手で抱き上げると、ベッドに放り投げた。
「キャア!」
夏希の体がリバウンドする。コングもベッドに飛び乗り夏希の上に乗っかった。
「何すんのよ!」
赤面して慌てる夏希のおなかにヒップドロップ!
「あああん!」
油断していた。何しろ185キロの体重だ。夏希は気を失ってしまった。
「今がチャンス!」
コングは夏希の両手首をベルトで拘束し、右足首も固定した。夏希が目を覚ます。
「あああ!」
まずい。夏希は必死に左足でコングを蹴った。しかしコングは足を掴むとアキレス腱固め。
「イタタタタタ…」
これでは逆らえない。最後の左足も固定されてしまった。
コングの癖なのか、また両手を高々と上げて歓声を浴びるポーズ。
夏希はもがいた。水着姿で両手両足を拘束されて無抵抗。怖過ぎる。
「ぐひひひ」
コングが上に乗ってきた。
「さあ、水着を剥いじゃおう」
「待ちなさいよ、まだ2回しか降参してない。3回目の降参でアウトでしょ?」
「そうだよん。だからこれから3回目の降参を奪うの」
「え?」
「降参?」
コングが笑顔で迫る。夏希は焦った。
「降参?」
「ほどきなさいよ!」
「降参?」
コングは何と、夏希のボディにパンチ連打。手加減はしているが夏希の顔が歪んだ。
「そんなそんな、卑怯よ」
「降参?」
「うぐぐぐ…」
これはたまらない。降参はできないから、夏希は腹筋に力を入れて耐えた。するとコングはストマッククロー。
「あああん!」
「降参?」
「嘘!」
「降参?」
夏希は慌てた。どうにもならない。さすがにダメか。
「卑怯過ぎる」
「そうだよ。卑怯にして無慈悲。無慈悲にして意地悪なコング様と言ったら巷では有名だよ」
「くううう…」
歯を食いしばり、両目をきつく閉じて耐える夏希がセクシーに映る。
白く美しい歯。コングはエキサイトした。容赦なく本気の胃袋掴みで夏希を窮地に追い込む。
「あああん!」
「降参?」
(どうしよう、耐えるのは無理)
「降参?」
「待って」
「待たないよん」
「コングさん、一生のお願い。待ってください」
コングも人間。良心がゼロパーセントではない。強気の夏希に低姿勢で哀願されると、握力を少し緩めたくなるのが人情だ。
「コングさん、あたしに2連勝する自信がないわけね?」
「何ですと?」
「あたしになら何回やっても勝つ自信があるでしょ?」
「まあ、なきにしもあらず」
「だったら、もう一回正々堂々と戦ってあたしから降参を奪えばいいでしょ。そしたらあたしだって、何されても文句はないわよ」
夏希の必死さがかわいい。
「じゃあ、ピスント運動してもいい?」
「それは…」
またストマッククローの握力を強める。
「わかった、わかったから」
「うにょ。自分で何約束したかわかってる?」
夏希は恨めしそうな目でコングを見た。
「だから、降参を奪ったらよ」
「うーん…」コングは腕組みした。「どうしようかな。せっかく縛ったのにほどくのは惜しい」
夏希は無言で待った。
「確かにスーパーヒロインにとって、敵の男にピスント運動されちゃうのは最大の屈辱だからね。一回くらいチャンスを与えてもいいかな」
夏希は、コングを優しい目で見つめた。
「ほどいてほしい?」
「ほどいてください」
「わかった、ほどいてあげるん」
コングは水着の紐を掴んだ。
「そこじゃなくて!」
「間違えた」
手足をほどかれると、夏希は素早くベッドから下りた。
ラストチャンスだ。命懸けの戦いになってしまった。
(こんなヤツに、絶対やだ)
コングが襲いかかる。夏希は俊敏。軽々とベッドに飛び乗る。コングが乗ると夏希はベッドから下りた。
コングが下りると今度はベッドの下に逃げる。コングもベッドの下に入って足を掴もうとした。夏希は先に出て、頭だけ出すコングの後頭部に上から左右のパンチ連打。
「NO!」

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