《MUMEI》

 部屋に入って真っ先に取り出したのは‥あの髪飾り。




 本当に、綺麗。





『あれ、特別に作らせた物なのよ?』

『ぇ‥』

『大切な人の為に、って』




 私の為に──黄羽様が用意して下さっていた物。




 もしそれが特別な物じゃなかったとしても──私には宝物なんだ。




 本当は──黄羽様が私を思って下さっていた──それだけで十分だった。




 本当に、それだけで。




「──黄羽様──」




 嬉しくて、何度も──あの方の名前を呟いていた。

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