《MUMEI》

「ごめんな・・・。

俺、もう誰も信用できんくなったんや。

だから・・・お前らが言ったことも信じられん。」


地面に手をついたまま、芝生ごと手をにぎりしめる。


指に絡んだ草が、無惨にもぶち抜かれた。


その手を掴み、智也は言った。


「無理もない。

お前はたくさんの奴らに裏切られたんだからな・・・。」


「・・・知ってたんか。」


「だから言っただろ?

俺達は幼いころからお前を見て来たって。

気付かないとでも思ったのか?」


一希が笑いながら言う。


苦しいのは、自分だけでいい。


そう思ってた。


だけど今、妙な感覚が起こっている。


こいつらに、知ってもらいたい。


俺が今まで受けて来た裏切りを。


死に物狂いで耐えて来たものを。


智也と一希の真剣な表情を見て、そう思った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫