《MUMEI》

「ここではまずい。

とりあえず中に入れ。」


グレイトが俺の背中を押した。


「じゃあ私はこれで失礼する。」


ラルフは翼を広げ、飛び去って行った。


おそらく、グレイトから受けた傷を癒しに行くのだろう。


傍目から見ても、ラルフは傷の痛みに耐えていると伺えた。


グレイト、おそろしや。


俺は改めて、グレイトの強さを思い知ることとなった。


中に入ると、玄関からして感嘆のため息しか出なかった。


全てが広い。


玄関なんて、一部屋分はありそうだ。


足元はこれまた高貴な大理石があり、所々、鮮やかな色をした石がちりばめられている。


前方に続く廊下は赤を縁取った、黒い絨毯(ジュウタン)が永遠と続いていた。


「ほら、突っ立ってないで早く上がれ。」


グレイトの一声でようやく我に返った。


そして前にある段差に右足を掛けた時。


「ちょっと待て。」


今度はグレイトの、慌てた声が聞こえた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫