《MUMEI》
ドエス魔人
夏希はコングの顔面めがけてキック!
入った。
「調子に乗るなあ!」
コングが立ち上がったと同時にベッドが吹っ飛んだ。
夏希はいきなり逃げる。
「あ、テメー、どっちが卑怯だ!」
夏希は今まで来た道をひたすら逃げる。コングも追う。
「待ーてー!」
夏希は先ほどの水のところまで走ると、わざと背水の陣に構えた。
「僕が突進したらよけてドボン。世の中そんなに甘くないよん」
「違うわ。あんたなんかに好きにされるくらいなら、オクトパエスに抱かれたほうがマシよ」
コングは蒼白。
「バカヤロー。僕ちゃん人間よ。ああ、タコに負けた!」
コングは天を仰いで悔しがる。
「許せん。そこまで嫌うおなごには、もう情けをかける必要性ゼロだね」
夏希は緊張した。これで絶対に降参はできなくなった。
コングが歩み寄る。
「それ以上近づいたら飛び込むわよ」
「試合放棄か?」
「違うわ」
コングがにじり寄る。睨み合う二人。コングが瞬間的に手を出して夏希の手首を掴んだ。
「しまった!」
コングは夏希の体を引き寄せると両腕を夏希の腰に回してサバ折り!
「あああああ!」
腰に凄い衝撃。夏希は両拳を上げて顔面にWパンチ。コングが腕を離す。その瞬間に夏希が飛び膝蹴り。交わされた。
「ベアハッグ!」
今度は両腕ごとサバ折り!
「ああああああ!」
夏希は必死にもがく。凄い怪力。抜けられない。
「くううう…」
泣き顔の夏希にコングが聞く。
「降参?」
夏希は声も上げられず、額に汗を光らせながら、首を横に力なく振る。
「降参?」
夏希は両目をきつく閉じ、歯を食いしばって首を横に振るのが精一杯だ。
「降参?」コングはサバ折りを続ける。
夏希は苦悶の表情でひたすら首を横に振る。
「かわゆい。降参?」
コングはさらに力を入れた。
「あっ…」
夏希は気を失って、コングの腕の中でだらーんと反ってしまった。
「あらら?」
コングは気を失った夏希をゆっくり仰向けに寝かせた。
いきなりテレビ目線になる。
「気を失ったら降参と同じだよね?」
コングはまた得意の歓声を浴びるポーズ。ゆっくり両手を上げて観客にアピールしているつもりらしい。
「さてとピスント運動…あれ?」
夏希がいない。コングは慌てた。
「しまった、水の中に飛び込んだか?」
コングが水中を覗き込んだとき、夏希の声が後ろから聞こえた。
「ここよ」
「え?」
振り向けば夏希は岩の上。そこからフライングキック顔面!
「おっとっと夏希だぜ」
「一生滑ってろ!」
夏希は助走をつけてジャンプ。背中に思いきりキック!
「ダー!」
ドボーン!
巨体が落ちて凄い水しぶきが上がった。夏希は走ってその場を去った。
「逃がすか」
コングは水から上がろうとしたが、両足を引っ張られた。
「あ、がぶごぶ…」
オクトパエスはコングの手足をぐるぐる巻きにしたが。
「ん?」
叫びながら陸に投げ上げた。
「バカモン、テメーの困り果てる姿見たって面白くとも何ともないわい!」
「うるへード変態!」
「黙れ変質者!」
夏希は先へ進んだ。再び〇×の幕が見える。夏希は走った。
「これは、〇だあ!」
幕を勢いよく破る。マットに着地。
「助かった」
夏希はマットにうつ伏せになったまま、少し休みたい気分だった。
ところが上を向くと、そこには3メートルはありそうな真っ黒のモンスターがいて、夏希を見下ろしていた。
「いい」
「喋った」
「いい。かわいい。僕すれてない子好き」
すれているか否かは勝手に決めてほしくなかったが、夏希は慌てて立ち上がった。
「僕の名前はドエス魔人」
夏希は名前で怯んだ。
「あと1回も降参できない状態のときに現れるのが、僕のズルいところ」
夏希は独り言のように呟いた。
「さっきのタコといい、こんなモンスターにどうやって勝てっていうのよ」
「お嬢。お名前は?」
「そこを通して」
「だーめ」

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