《MUMEI》

『違うのよ…虐めて
る訳じゃないの』

姪は私の言い訳など
に耳を貸さず兄へす
がりついた。


『お父しゃん!帰ろ
?お家へ帰ろう?』


『……』『……』

幼い姪の必死な訴え
に私も兄も何も言え
ずにいた。


暫くして…姪の頭を
優しく撫でながら兄
が口を開いた。


『良し、帰ろうか?
あの家へ…三人で暮
らしたあの家へ…』


『うん!!』

姪は跳ねる様に顔を
上げ兄を見た。


そうして何週間振り
に僕と娘はアパート
へ戻って来た。


『『ただいま』』

当然の如く迎える者
も居ない部屋は静ま
り返り冷たく僕らを
迎えた。


そこかしこに君がい
た証が散らばってい
て…またしても僕に
深い悲しみを抱かせ
る。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫