《MUMEI》

「サクヤ‥?」

「ぇ‥‥‥、ぁっごめんっ‥」




 ぼんやりして‥アゲハ君が呼びかけたのに気が付いていなかった。




「帰る? そろそろ──」

「ぁぁ」

「まだ‥全部は散らないよね」

「もう暫くは持つだろう」

「──うん」




 ゆっくりと、歩き出す。




「───────」




 振り返ったら、茜色の中で──影絵みたいに木の形が綺麗に浮かび上がっていた。




「──?」

「あれ──」

「? ぁぁ──なかなか綺麗だな」

「うん」




 夢を見ているような気分で、私はそれを見つめていた。

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