《MUMEI》

… わたしの耳は 貝の殻 海の響きを 懐かしむ …………… 【ジャン コクトー】


暗いアパートの一室 ……
机に置かれた偽物ランプのぼんやりとした黄色い灯り…

こんなに蒸し暑い夜でも時折〜風はやって来る…

街角の匂いを乗せて・・〜
〜人々の喰らい尽くした内臓の焼け焦げた匂いを乗せて ・・〜〜

田嶋は 一人椅子に凭れながらプルジンスキー教授から預かった携帯と一緒に添えられていた 手紙を… 茫然自失で 眺めていた…。

「…突然の帰国の筈なのに…手紙の末尾に書かれた日付けは 半月以上も前になっている……教授は こうなるコトを予測してたのかな…… 」


午前2時……一匹の猫がゴミ箱を蹴散らして走り去っていく…

街は昼間の熱気と臭気とで 不完全な眠りについていた 。

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