《MUMEI》

「カッター……。」

電柱で受けた辱めが、頭を過ぎる。


「俺は、ずーっと、試していたって言いましたよ?」

安西が……
崩れてく。

俺の耳元でカッターが伸びて、切っ先が頬を突く。
刃が、触れただけで痛い。

「や……やだよ、冗談だよね。」


「怖かったら後ろ向いていてればいいんです。ほら、この前だってすぐ済みましたよ。」

ひっくり返され、腰辺りに重しのように乗られた。
首筋に這う舌が以前の恐怖を再来させる。


「やめ……、あ、」

屹立としたものが腿に擦り寄ってきた。
体中を汗が滲ませ総毛立つ。


「下手に抵抗したら、痛い目を見ますよ。
ホラ、ウチ先輩の時みたいに喘いでればいいんですから、俺に犯されてる間だけはウチ先輩の名前呼んでも許してあげます!」

サク、と、
肩が切れた。

カッターが肉を裂く。
裂かれたのは、
きっと、
体だけじゃない。

薄暗い中で、安西の表情は分からない。
俺は、哀しい。

結局、誰も助けられなかった。
俺が安西を利用した結果がこれなんだ。

安西の真摯な気持ちに背いてきた、俺の優柔不断さが招いた罰だ。

ごめんなさい……

安西を安西でいさせてあげれなくて
ごめんなさい。

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