《MUMEI》 もう一人の見知らぬ人その時、自分の声ではない声が、突然頭の中に飛び込んできた。 (たすけて、たすけて、たすけて!) 音声ではない。脳に直接、響いている。 まるで、自分の脳と他人の脳とが混線を起こしているかのようだ。 驚いて顔を上げると、通りの向こうに一人の少年が見えた。 齢のころは十六、七歳。 奇しくも私と同じように頭を抱え、歩道にうずくまっている。 身体を震わせながら、泣いているのも一緒だ。 (たすけて、たすけて、たすけて!) その叫びは、頭の中で徐々に鮮明になっていく。 声の主は、その少年だ。 彼の発するSOSが、私に届いているんだ。 直感的に、そう思った。 私は、ふらふらと立ち上がり、少年のいる歩道に向かって、ゆっくりと歩き始めた。 前へ |
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